読書備忘録13『ゼロ年代SF傑作選』/SFマガジン編集部編

 今回も短編集。だけれどもオムニバス形式のものになります。特に興味があったのは冲方丁西島大介でした。これはオタク語りなのですが,自分,冲方丁の作品を(単行本化されたものは)ほぼ全て読み切ってしまったのでもう短編とかでしか楽しめない。

 この本のコンセプトとしては,タイトルの通り,ゼロ年代SFの良いモノを纏めよう,という感じでしょうか。実際のところかなり良い作品ばかりでした。ゼロ年代と言われるとやはり自分はセカイ系なのですが,この作品群もかなり影響を受けているんでしょうかね。評論できるほど知識も素養もないので戯言だと思って欲しいのですが,題材としてはハードSFっぽいものが選び取られてはいても,書きぶりなどにやはり「ラノベ的」を感じてしまうモノがちらほらありました。印象的だったのは「アリスの心臓」/梅猫沢めろん で,この方は美少女ゲーム出身らしく(その辺明らかに「セカイ系」意識がありそう),内容的にも宇野が「ゼロ年代の想像力」で述べていた(はず)『白痴のヒロインによる主人公の全肯定』(少し言葉が良くないのも含めて原文ママのはず,ちょっと手元に本がなく細部は違う可能性アリ)を感じました。なるほどなぁ,と言いながら読み進めていました。

 作品として最も印象に残っているのは,『アンジー・クレーマーにさよならを』/新城カズマ で,端的に言い表すと「百合SF」です。セカイ系の延長として「キミ」と「ワタシ」なんでしょうかね(だから知識も素養もないのでry)。時系列が入れ替わりながら物語が進んでいく感じは『ニルヤの島』/柴田勝家 と似たものを感じる。これは肉体的な行為の代わりに情報的な行為(こんな書きぶりが正しいのかはしらん)が主に書かれていて,肉体的な方が苦手な自分としては「これだよこれ!」なんて気持ちになりました。ゼロ年代とSFの融合感もかなり心地よかった。これ,イチオシ作品です。百合オタクも是非読んで欲しい。

 さて,これが好きな人は

『NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション』/大森望 責任編集

『ハーモニー』/伊藤計劃

スワロウテイル』シリーズ/籘真千歳

あたりがオススメでしょうか。セカイ系のオススメはエヴァけものフレンズ(一期)です。あと宇野の『ゼロ年代の想像力』は必読だと思います。早く『母性のディストピア』も読まないと...。

 

 それでは。