読書備忘録2021-14~20『皇国の守護者』/佐藤大輔

 やーーーーっと読み終わったのです。二段組の本は本当に読みにくいので合間合間に別の本を挟みながら読み切りました。物語シリーズもはやく文庫化してくれ,ってずっと言っている気がする。

  いわゆる架空戦記モノってやつです。とはいえどう考えても「皇国」のモデルは日本ですね。たまに書いていたように記憶していますが,自分は実は軽いミリオタで(兵器とかにはそれほど興味がないけれども,兵隊の運用であるとか銃後との関わりとかそういった方面に興奮するタイプ),この作品はそのあたりの好みにドンピシャです。これは『幼女戦記』にも言えます。設定には割とファンタジー要素があるんですが,それでも現実から(運用面において)乖離しているものはそれほどなく,そういったあたりに作者のこだわりを感じます。ただ一つだけ気になるのは(未完なのでその後の展開としてあったのだ,と言われると何も言えないが),皇国と帝国の戦争がこれほど泥沼になっているのに南冥やらアスローンやらとのいざこざが一切出てこないのはどうしてなんだ,ということでしょうか。皇国からすればこれらの国と結んで帝国に二正面を強いるというのが常道にも思えますが一切の交渉が描写されなかったのがどうにも(ほとんど本編にかかわらなかった西原とかが手をまわしてそうな雰囲気もありますが)。

 さて,これが好きな人は

幼女戦記/カルロ・ゼン

マヴァール年代記/田中芳樹

あたりをお勧めできるでしょうか。銀英伝も,と思ったんですが,恥ずかしながら自分が5巻で止まっているのでちょっと避けました。架空戦記はやっぱりいいですねぇ。

 それでは。

読書備忘録2021-13『妖精作戦』/笹本祐一

 興味を10年持ち続け,買ってから1年積んだ本です。自分でもバカすぎると思います。

 異能×学生,みたいなのって今でこそ腐るほどありますけど始まりはいつだったんでしょうか。この作品はその源流に近いところにいるんですかね。この作品のおもしろい(と思っている)ところは,主人公が異能を持っているわけではない,というところで,この辺が『サクラダリセット』とか『時をかける少女』とは違うところです。個人的にはこういう設定だと「勇気! 友情!」みたいになるのでそれはそれで好きです。シリーズは3作あるみたいなんですが,この最初の1冊でめちゃくちゃ大ぶろしきを広げている(巨大すぎる組織が出てきたり宇宙まで行ったりする)気がして,どう畳むのか気になってはいます,が,どうも食指が動かない。というのも,どうにもこういうのを心から楽しめるメンタルが少し弱くなっちゃっているところがあり,多分むかしの僕らが持っていた「拗らせ」が無くなっちゃったのかなぁ,なんて気がしています。今,ぼくらシリーズを読んでも同様の感想を抱きそう。難しいお年頃だ~。

 さて,これに対するオススメは

サクラダリセット』シリーズ/河野裕

『ぼくら』シリーズ/宗田理

『revisions リヴィジョンズ』シリーズ/木村航

あたりですかね。ぼくらシリーズは言わずもがな,最後のも異能とはちょっと違うけれどジュブナイル系の良い作品です。昔(2~4年前くらい)はジュブナイルものが好きだったんですが,そういえば最近読んでないな~,と思いました。とあるシリーズが途中で止まっているので読みなおそうかな。

 それでは。

読書備忘録2021-12『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』/SFマガジン編集部

 大分前に読み終わってはいたんですが例の如く悶々としていたのでしばらく放置していました。百合に向き合う2021のきっかけになった本です。

 それぞれの短編が出来が良いだのなんだのは言いません。そもそもこの備忘録の目的からは外れますし,百合をまだ理解できていない自分が言うものでもないと思うので。良かったものを箇条書き的に書いていきます。

・まえがき

 これが一番良かったまである。何とも言えない気持ちになって,胸がほっこりするというか,エモいというか,まぁともかくすごく良い前書きでした。

・幽世知能/草野原々

 やっぱり草野原々なんですよ。以前も書いた気がしますが,心がグッチャグチャになった挙げ句,最後には2人が1になって欲しいという歪んだ性癖があるのでこれがぶっ刺さりました。設定もSF的道具にちょっとリアリティのある舞台となかなかニクい感じ。好きです。

彼岸花/伴名練

 伴名練って確か『日本SFの臨界点』の人でしたっけ。恥ずかしながらこれで初めて読んだのですが,まぁすごく良い。吸血鬼っていうのは「血を吸う」という設定を上手く使えば親密さに繋げることができるので,百合の道具として良いよなぁ,とは思っていました(東方のスカーレット姉妹もそういう文脈が一部ありそう)がこう使われるか~~という感じ。距離感の演出が上手い。そしてやっぱりオチはそうなって欲しい!

 

 という感じです。小川一水は? という気持ちもありますけれど,既に単行本の方を読んでいたのでそれほどの思いは抱かなかったですね。何はともあれ百合に向き合う2021をこれからもやっていくつもりなのですが,これをヒントに百合SFを追っていきたいと思いましたまる。

 さて、これについてはもうオススメが決まっていて、『ゼロ年代SF傑作選』収録の

『アンジー・クレーマーにさよならを』/新城カズマ

です。これは本当に良い百合SFだと思っているのでいつまでも人にオススメしちゃう。

 それでは。

 

P.S. 伴名練っていうPNはハンナ・アーレントから来てるんですかね,何となく連想してしまいました。

読書備忘録2021-11『黒猫の遊歩あるいは美学講義』/森晶麿

 今回はハヤカワのミステリものです。Kindleで安く売られており,前々から巻末広告で紹介されていたのが気になっていました。

 この本は,全編を通じてポオの小説をモチーフにして話が進んでいきます。自分はポオ(エドガー・アラン・ポー)にほぼなじみがない(江戸川乱歩ならそこそこ読んだことあるけれど)ので「なるほどね~~」などとはなりませんでした,無念。ちょっと調べてみたらポオの小説で最初に日本語されたのが『黒猫』という作品らしく(Wikipedia情報),そういうところから凝ってるな~という感想です。ポオというからには探偵ものっぽい雰囲気が展開されており,前回の『高い窓』みたくトリックが~というものではなく,断片的な情報から真相にたどり着く,という形式なので自分としては新鮮な気持ちです(いままで探偵ものをそう読んでこなかったのもある)。テーマの1つに美学があるようで,レトリックな部分にも心地よいものがありました。作中に出てくる詩なんかはすごく好みの作品でした。こういう詩も書いてみたいものではあります。

 さて,オススメしようにもなかなかこういう系統の作品のバックグラウンドが無いので難しい。探偵ものってそんなに興味が無かったんですよね。最近ちょっと面白いのでは?になっています。探偵もので好きなのが『刑事コロンボ』(探偵......?)なので普通の謎解き系がそこまでしっくりこないというのもあります。そういえばコロンボが好きなあたりからもネタバレOK気質の片鱗が見えますね。話が逸れましたが,とりあえず

刑事コロンボ

をオススメしておきます。最初っから犯人が分かっていて,それをどのようにして探偵が暴いていくのか,という形式は慣れないと「え?」となりがちかも知れませんが(今回の本はそういう形式では無いです)。

 それでは。

読書備忘録2021-10『高い窓』/レイモンド・チャンドラー 清水俊二 訳

 名著シリーズです。マーロウシリーズですね。何も考えずに読み始めたんですけどシリーズの途中巻だったようで,道理でキャラクターの説明とかが全然ないわけですよ。

 さて,たぶんこれはハードボイルド系の作品であると理解したのですが,やはり海外作品のハードボイルド系は(翻訳の難しさも相まって)読みにくくなりがちです。個人的にはもっと軽妙な訳もあっていいと思うんですが,でもそうするとハードボイルドじゃないよなぁ,って気持ちもあります。これは『ニューロマンサー』の時にも思ったことですね。やっぱり自分は「文学」まで高められるとちょっとしんどくなっちゃうのかもしれないです。エンタメとして読書を消費している(ので一生小説が書けない)。

 探偵ものとしてはしっかり面白いと思います。某ちっちゃくなった高校生探偵の話みたいにトリックが~みたいなのはなく,単純に隠された真実を少しずつたどっていく感じですね。ほかの巻も機会があれば読んでみたいですね。

 おすすめができるほどハードボイルド小説を読んでいないので,とりあえず

ニューロマンサー』/ウィリアム・ギブスン

を挙げておきます。自分は途中で挫折してしまったのでいつか読みなおしをしたい作品です。

 それでは。

読書備忘録2021-9『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』/小川一水

 まーたコイツ小川一水読んでるよ。というわけで小川一水の最新作(?)です。図らずもここ最近百合作品ばっかり読んでいます。百合に向き合う2021。ともあれ百合に対する理解が深まっている気がします。

 さて,もともとは『アステリズムに花束を』の書き下ろしだったっぽいです。外宇宙の異世界での生活を軸に,百合っぽい展開をしていきます(説明が雑すぎる)。昏魚(ベッシュ)という魚のような見た目をした生命体(のようなもの)を捕る宇宙漁師が主人公で,その相棒(押しかけ女房的な)との生活を軸に話が進んでいきます。船を形作る側と船を操る側がそれぞれ別っていうのが良い感じですよね。百合展開にしやすそう。ただただ生活を描写するだけで無く,その生活圏の形成史も絡めたスペクタクルになっているのが面白い。それはさておき小川一水は魚のモチーフがめちゃくちゃ好きですよね。『老ヴォールの惑星』も『コロロギ岳から木星トロヤへ』も魚っぽい生物が出てきます。いずれも高次元生命体というか人間の理解を超えた生物として描かれるのも共通している。

 ということで今回のオススメはその2冊,

『老ヴォールの惑星』/小川一水

『コロロギ岳から木星トロヤへ』/小川一水

でしょうか。高次元生命(というかAI?)みたいなのが好きだと円城塔も良いかも知れない。百合本のオススメができるほど自分の中の百合感が定まってないのが難しい。

 進捗報告としては,現在ぼちぼちと『皇国の守護者』を読んでいます。ちゃんと読まないといけないのになかなかページが進まなくてしんどいですね。何が言いたいかというと,二段組みの小説は読みにくい。

 それでは。

読書備忘録2021-8『未必のマクベス』/早瀬耕

 話題になってたような気がする作品を読もう2021です。......嘘です。ちょっと興味あったところに古本屋で安かったのを見て衝動買いしました。

 いわゆるサスペンスってやつなんですかね。ICカードの暗号化技術を巡って繰り広げられる犯罪を渡り歩く本です。舞台は東京と東南アジアで,新興の情報技術を扱う作品として良い感じの舞台設定をしています。主人公がなかなかハードボイルド感のある人物で,バーに行くと必ずキューバリブレを頼むところなんかは和製(?)ハードボイルドキャラって感じがして良い。イギリスならきっとスコッチだしドイツならビールなんですかね? それはさておき,たまに文中で「キューバリブレ」と「クーバリブレ」が出てきて混乱してました。おさけのなまえわかんないの......。話が逸れましたが,尻込みしそうな厚さの割に文体はかなり読みやすく,サスペンス特有の「こっからどうなるんだろう」感も強く,読むのにそれほど苦しさは覚えなかったです。こういう作品って,9割9分最初に謎かけみたいな問があって最後でそれを回収しますよね。これも多分に漏れずそういう感じになっています。物足りなさといえば,もっと巨悪を巻き込んだ展開になるのかなぁと思わせつつ比較的こぢんまりとした舞台の中で展開していたことですしょうか。まぁ某倍返しとか某棒とかに比べるとアレなので別に良いと思いますが。

 さて,これが好きな人は何が好きなんですかね。自分自身あまりサスペンス系を読まず,一時期『三毛猫ホームズ』シリーズ(赤川次郎)とか今野敏の小説とかを読んでいたくらいなので適切なオススメができない。なので今回はとりあえず『三毛猫ホームズ』を推しておきます。赤川次郎は小学生の頃に図書館の棚の端から端まで読むというチャレンジをしたときに出会い,まぁまぁ好みに影響を与えた作家ではあります。最近は全く読んでないですね......。

 それでは。