読書備忘録2021-10『高い窓』/レイモンド・チャンドラー 清水俊二 訳

 名著シリーズです。マーロウシリーズですね。何も考えずに読み始めたんですけどシリーズの途中巻だったようで,道理でキャラクターの説明とかが全然ないわけですよ。

 さて,たぶんこれはハードボイルド系の作品であると理解したのですが,やはり海外作品のハードボイルド系は(翻訳の難しさも相まって)読みにくくなりがちです。個人的にはもっと軽妙な訳もあっていいと思うんですが,でもそうするとハードボイルドじゃないよなぁ,って気持ちもあります。これは『ニューロマンサー』の時にも思ったことですね。やっぱり自分は「文学」まで高められるとちょっとしんどくなっちゃうのかもしれないです。エンタメとして読書を消費している(ので一生小説が書けない)。

 探偵ものとしてはしっかり面白いと思います。某ちっちゃくなった高校生探偵の話みたいにトリックが~みたいなのはなく,単純に隠された真実を少しずつたどっていく感じですね。ほかの巻も機会があれば読んでみたいですね。

 おすすめができるほどハードボイルド小説を読んでいないので,とりあえず

ニューロマンサー』/ウィリアム・ギブスン

を挙げておきます。自分は途中で挫折してしまったのでいつか読みなおしをしたい作品です。

 それでは。

読書備忘録2021-9『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』/小川一水

 まーたコイツ小川一水読んでるよ。というわけで小川一水の最新作(?)です。図らずもここ最近百合作品ばっかり読んでいます。百合に向き合う2021。ともあれ百合に対する理解が深まっている気がします。

 さて,もともとは『アステリズムに花束を』の書き下ろしだったっぽいです。外宇宙の異世界での生活を軸に,百合っぽい展開をしていきます(説明が雑すぎる)。昏魚(ベッシュ)という魚のような見た目をした生命体(のようなもの)を捕る宇宙漁師が主人公で,その相棒(押しかけ女房的な)との生活を軸に話が進んでいきます。船を形作る側と船を操る側がそれぞれ別っていうのが良い感じですよね。百合展開にしやすそう。ただただ生活を描写するだけで無く,その生活圏の形成史も絡めたスペクタクルになっているのが面白い。それはさておき小川一水は魚のモチーフがめちゃくちゃ好きですよね。『老ヴォールの惑星』も『コロロギ岳から木星トロヤへ』も魚っぽい生物が出てきます。いずれも高次元生命体というか人間の理解を超えた生物として描かれるのも共通している。

 ということで今回のオススメはその2冊,

『老ヴォールの惑星』/小川一水

『コロロギ岳から木星トロヤへ』/小川一水

でしょうか。高次元生命(というかAI?)みたいなのが好きだと円城塔も良いかも知れない。百合本のオススメができるほど自分の中の百合感が定まってないのが難しい。

 進捗報告としては,現在ぼちぼちと『皇国の守護者』を読んでいます。ちゃんと読まないといけないのになかなかページが進まなくてしんどいですね。何が言いたいかというと,二段組みの小説は読みにくい。

 それでは。

読書備忘録2021-8『未必のマクベス』/早瀬耕

 話題になってたような気がする作品を読もう2021です。......嘘です。ちょっと興味あったところに古本屋で安かったのを見て衝動買いしました。

 いわゆるサスペンスってやつなんですかね。ICカードの暗号化技術を巡って繰り広げられる犯罪を渡り歩く本です。舞台は東京と東南アジアで,新興の情報技術を扱う作品として良い感じの舞台設定をしています。主人公がなかなかハードボイルド感のある人物で,バーに行くと必ずキューバリブレを頼むところなんかは和製(?)ハードボイルドキャラって感じがして良い。イギリスならきっとスコッチだしドイツならビールなんですかね? それはさておき,たまに文中で「キューバリブレ」と「クーバリブレ」が出てきて混乱してました。おさけのなまえわかんないの......。話が逸れましたが,尻込みしそうな厚さの割に文体はかなり読みやすく,サスペンス特有の「こっからどうなるんだろう」感も強く,読むのにそれほど苦しさは覚えなかったです。こういう作品って,9割9分最初に謎かけみたいな問があって最後でそれを回収しますよね。これも多分に漏れずそういう感じになっています。物足りなさといえば,もっと巨悪を巻き込んだ展開になるのかなぁと思わせつつ比較的こぢんまりとした舞台の中で展開していたことですしょうか。まぁ某倍返しとか某棒とかに比べるとアレなので別に良いと思いますが。

 さて,これが好きな人は何が好きなんですかね。自分自身あまりサスペンス系を読まず,一時期『三毛猫ホームズ』シリーズ(赤川次郎)とか今野敏の小説とかを読んでいたくらいなので適切なオススメができない。なので今回はとりあえず『三毛猫ホームズ』を推しておきます。赤川次郎は小学生の頃に図書館の棚の端から端まで読むというチャレンジをしたときに出会い,まぁまぁ好みに影響を与えた作家ではあります。最近は全く読んでないですね......。

 それでは。

読書備忘録2021-6, 7『裏世界ピクニック3 & 4』/宮澤伊織

 何か読み終わった後悶々としている内に次も終わっちゃったんでまとめて書きます。

 最近読み続けているシリーズ,kindleでまとめて買ったときになぜか5だけ入っていなかったのでここでいったん買っている分は終わりです。ストーリーはすごく面白くなってきました。張り巡らせていた伏線なんかを少しずつ引っ張ってきたり,新しいものを伏線にしたりなど,厚みが出てきて良い感じです。ただ,やっぱりこの百合感が個人的にしんどい。だから悶々としてたわけです。もっと葛藤していて欲しいし,空魚の方にはもっと深刻な負い目を感じて欲しいし,鳥子の方にはもっとメンヘラ的な依存を示して欲しい。最初っから百合を売りにしている感があるので自分はターゲッティングされてないと思っており,作品を貶すつもりは一切無いです。そもそもストーリーめちゃくちゃ良いので貶すところないし。次の巻では八尺様がまた出てくるらしく,一度使ったネタを2度目にどうやって処理してくるのか楽しみです。

 それでは。

読書備忘録2021-5『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』/宮澤伊織

 裏世界ピクニック,テーマがテーマなのでインターネットに浸かっている人間的にはやはり楽しい。てなわけで2冊目です。どんどん裏世界に近づいて言っている感じが面白く,「深淵を覗くとき,......」なアレを感じますよね。主人公組がだんだん現実(表世界)と裏世界との境界を曖昧にしてきている描写が,気が狂っては正気に戻る,を繰り返しながら示されていっています。とはいえまだ理性を保っていることを示したいのか,この巻では人助け的ストーリーの短編が多かったですね。といいながらさらっと銃を補充してるのは気が狂っている証左なのかも知れません,しらんけど。

 ただ,どうしても半端に百合っぽいのがどうも自分にはこそばゆい。自分は百合が好きであり百合が嫌いという,それはまぁ面倒な性癖を持っているのですが,これはあまり好きでは無い方の百合です。個人的には,もっと互いに傷つけ合って,「愛」だの「好き」だのが漸く直接言えると思ったら既にその関係性は歪みきっている,みたいなのが好きです。よく言う「好きだから傷つける」ってやつ。この「傷つける」は,精神的なものを主として多少は身体的なものを伴っているととても良い(さらに言えば傷つけられる側はそれが純粋な「愛」でないと気付いていながら自身の負い目から笑顔でそれを受け入れている,なんて感じだとなお良い)(ニチャァ)。だからきらら系の作品はそれほど好きでは無いけれど,『コスモファミリア』が好きなんですかね。百合の最終形態は互いが互いで無くなる(合一してしまう)のが理想です。マジでキモい。

 話がアンドロメダ銀河まで飛んで行ってしまいましたが,やはりこれが好きなら

『物語』シリーズ/西尾維新

は必読ですよね。怪異譚をテーマにした作品はもっとあったはずなんですがどうにも思い出せない。記憶力がゴミカスになってしまいました。

 

 それでは。

読書備忘録2021-4『裏世界ピクニック』/宮澤伊織

 異世界系,好きなんですよね。まだ異世界転生ものには手を出していないのでそっちにハマるかどうかは分かりませんが,とりあえず『幼女戦記』は好きです。

 さて,前々から気になってはいたこのシリーズを漸く読み始めました。世事に疎いので,書いている今,アニメ化していたことを知りました。話の内容としては,都市伝説をフィーチャーして,そんな怪異が跳梁跋扈する異世界で冒険する(?)作品です。「くねくね」とか「きさらぎ駅」とか有名どころを元にアレンジしている感じ。主人公二人組が異様に百合っぽくなるのは昨今の流行ですかね。個人的にはあまり好ましくないと感じてしまう。話が少し逸れましたが,これらの都市伝説をギミックの要素として用いて「裏世界」というものの本質に少しずつ近づいていくような,そんな構成になっています。ただ,この手の設定をどこかで見たような気がするんですよね。この作品の解釈とはちょっと違いますが「怪異は本質的に怪異であり,人を恐怖させることによってのみ存在し得る,だから存在のために恐怖を与え続ける」的な。うまく思い出せないですが。

 さて,これが好きな人は

『物語』シリーズ/西尾維新

とかが良いと思います。良くも悪くもポップで軽いです。最近のハヤカワそういうの多いですよね(これは罠で,自分の読む本がそっちに偏っている)。

 

 では。

読書備忘録2021-3『満願』/米澤穂信

 良い感じのペース(年100冊ペース)で本を読めていますね。いつまでこの勢いが続くのか......。マンガはここには書かないことにしているのですが,『ゆるキャン△』と『キルミーベイベー』を読み漁っています。『ゆるキャン△』の5巻めっちゃ良かったっすね......。

 さて,これは米澤穂信の短編集です。短編集ですが,いわゆる連作と言うやつで,テーマ(多分「人の暗い部分」とかそんな感じだと思います)に沿っていくつかの話が収録されています。こういう系の本って,ともすれば「どう関連しているんだ?」とか「一話当たりがあんまり面白くないなぁ」などの感想を抱きがちなのですが,そのあたりはやっぱり米澤穂信,ミステリー的な楽しみで良い感じに繋いでいます。『インシテミル』とかそういう系ですね。自分自身,米澤穂信との出会いが『インシテミル』なのでこういうスタイルが落ち着きます。まだ『氷菓』シリーズを読んでいないので早く読まないといけない気もしますが,あれはアニメで充分かなぁと思っている自分もいます。ネタバレを避けようとすると漠然とした感想になりがちなのはもうどうしようもないので許して欲しい。

 さて,これが好きな人は

インシテミル』/米澤穂信

なども読んで欲しい。

 

 それでは。