読書備忘録1『大進化どうぶつデスゲーム』/草野原々

【前置き】

 以前Twitterで少しだけ読書備忘録をやっていたのだけれど(当時は1日1冊とかいうふざけたペースだった),いつからか疎遠になっていたのを思い出した。積ん読が常時10~20程度ある人間にとっては,特に印象が薄かった本については,「これ読んだっけ」が割と発生して困るので,ともかく慣習を復活させようと思って書く。単純にURLだけ取得していて1年以上放置していたはてなブログを使おう,というモチベが高いのもある。Tumblrと使い分けが図れたら良いか,と。ブログタイトルは小洒落たのを考え中であるので当面Tumblrと同じものにしておく。

 

【本題】

 一か月以上前に読了した本ですが,ここ最近ではトップレベルに印象に残っているのでこれから始めます(お堅い文体は苦手ですね,もうやんない)。さて、この『大進化どうぶつデスゲーム』,タイトルからするといかにもラノベ感があるかと思いますが,なんと出版社はハヤカワ。それだけでクラクラしますね。これには一応文脈があって,作者の草野原々は第48回星雲賞日本短編部門の受賞者なんですよね(受賞作は『最後にして最初のアイドル』,これもハヤカワから出版されていてオススメ)。さて,簡単なあらすじはというと,「過去が改変されて人類が滅びそうになっているから(学校の)クラスみんなで救いに行ってね。あ,拒否権は無いから☆」的な。内容もラノベか?一応「ハード百合SF群像劇」なんてオビに書いてあるけど「オタク的百合スプラッタ」だと個人的に感じています。というのも、『最後にして最初のアイドル』の解説にも書かれていたのですが、作者はいわゆる「悪いオタク」なんですよ。悪いオタクはすーぐ既存の作品を自分の世界に持ち込んで好き勝手させる。妄想で済むならいざ知らず,この作者はそれを小説の体にしちゃうから手に負えない。『最後にして最初のアイドル』自体もとともは矢澤にこの同人小説らしいし,書籍に収録されている他の短編もけ○のフレンズだし。そういうの,大好きです。スプラッタはというと,飛ばされた先でサクッと人が死ぬからです。全体を通して作者は人を殺したがっている感じはしますね。
 真面目にネタバレにならない範囲で感想を書くと,クラスの中の人間関係がそのままにサバイバルに入るとこうなる,というのは人間関係を掌握したいと考えるオタクがやりがちな気はします(というかオタク小説は作者が神になりたがる風がある)。ギスギスしたところとか,表面上だけ取り繕った関係とか,そういったものがどんどん崩壊していくけれど中には百合っぽいところがあって...。という感じ。最近のオタクはみんな百合が大好きですね。百合オタクは読むと良いんじゃないでしょうか(投げやり)。ただし,救いは無い(あるけど)のできらら系のほんわか百合愛好者にはお勧めしません。『ハーモニー』が好きな百合オタクは良いと思う。とはいえ僕は百合オタクではないのでその辺の分類の正確性は保証できません。悪しからず。もう一つ,関係性オタク(これはもう死語ですか...?)には刺さりそうなのが巻頭の相関図で,これを見ながら作品を読み進めるといろいろ把握しながら読み進められる。裏を返せば登場人物が非常に多く(クラス全員が登場人物なのでそれはそう),これを相関図なしに把握しながら読むのは難しい。個人的にはもう少し登場人物が減ると読みやすそう。
 SFとして見ると,ぶっ飛んだ設定についてはライトと見せかけて案外(SF的に)しっかりしているので面白い。登場する敵(?)もちゃんと研究して描かれている感じがして,さすが理系大学院生という感じ。話がそれますが理系研究者SF作家といえば某湯葉氏ですね。最新作の短編も面白かった。今度書くかも。
 まとめると,案外SFしてるけどノリは完全に悪いオタク。僕みたいな同類は楽しめるけれど,許せない人(ハードSF至上主義の人,イチャイチャしたほんわか百合が好きな人)あたりにはあまりオススメできないかも。ラノベっぽいという印象通り,かなり軽いのでサクッと読めそう。ただし,最後になりますが割とグロな描写があるので苦手な人は注意。
 これまでに僕が読んだ範囲内で,これが好きな人が他に好きそうなのは
『最後にして最初のアイドル』/草野原々
『フリーランチの時代』/小川一水
あたりでしょうか(このコラム的なものは毎度やっていきたい)。
ではまた次の読書備忘録で。

P.S. 一時期10冊まで減った積ん読ですが,気が付いたら17まで復活しました。おかしいですね。