読書備忘録16『サクラダリセット』/ 河野裕

 先日言っていた長めのものを読んでいる,という話はこれでした。自分はこの手のシリーズものを(できることなら)一気に読みたいと思っている人間なのですが,この『サクラダリセット』については,早々に全7巻を揃えてしまったのが運の尽きでした...。そう,足掛け2年ほど積んでいたのです。ラノベ角川スニーカー文庫なので)なんだから早く読めばいいものを,全7巻という絶妙な長さが災いして全く手につかず...。コロナ禍の所為で本棚から未読が消える&通学環境の変化,によってようやく読み始めて現在に至る,という感じです。電車通学のおかげというところは多分にあるのでそこには感謝しています。

 さて,内容はというと,いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」ですね。個人的にはタイトルからしタイムリープ系のSFを期待してたのですが(というか映像化の時のキャッチコピーがそんな感じだったと記憶している),ちょっと期待外れ感がありました。ともかく「ボーイ・ミーツ・ガール」は好物なのでそれなりには楽しめました。それなり,というのは個人的な好みの部分が大きい。「リセット」という能力と「記憶を保持する」という能力を起点にして話が進んでいく感じ。物語が進むにつれて過去が明らかになっていき現在とつながっていく,という展開はやはり引き込まれるものがあって良い。ストーリーそのものについてもしっかり作りこまれていて,ある種タイムリープSFとも通じるところがあります。

 それなり,と言ってしまったのは時々挟まれるちょっとクサいとも言えるような言い回しのため。”未来を思い出す”なんて(ストーリー的によくわかるものの)いかにも厨二的で「うわぁぁぁ」となっちゃいました。あと,どうしても時代柄なんでしょうがセカイ系をちらちらと感じてしまい,そこに振り切れないもどかしさはありました。またまた個人的な話として,自分は半端なセカイ系が少し苦手です(やるなら徹底的にやるor排除してほしい気持ち)。似たような「ボーイ・ミーツ・ガール」として『ムシウタ』/岩井恭平 があるのですが,こちらは薬屋くんと杏本さんのセカイですからね。つまり,ヒロインはしっかりと振り切って欲しかった(または恋愛的な要素を完全に排除してほしかった)。重ね重ね,これは好みの問題。

 というわけで,この本が好きな人は,

ムシウタ』/岩井恭平(自分の青春です)

新世界より』/貴志祐介(異能もの)

404 Not Found』/法条遥(タイムリープもの)

あたりが良いでしょうか。『ムシウタ』はめちゃくちゃ好きな作品で,これが完結した時にはあまりの衝撃に一か月くらい引きずってました。確実に自分の性癖に影響を与えている作品です。

 それでは。