読書備忘録15『火星の人』/アンディ・ウィアー 小野田和子 訳

 またまた海外作品。以前ちょこっとだけ読む宣言をしたので読みました。えらい。現在はちょっと長いシリーズものを読んでいるので更新が遅れていますね。

 さて、映画にもなったこの作品。前評判として「火星でジャガイモを育てる話」とは聞いていましたが,まぁ事実そうでした。ただ,それに加えて「火星で爆発をする話」とも言えそうな雰囲気はあります。おそらく,もともとかなり軽妙な文体なんでしょうが,訳がとても軽い感じで,ラノベ的に読めました。お前は本当にハヤカワか???となるほど。サバイバル小説だとは思いますが,ちょっとずつSF的視点があって面白い。映画から先に見たのでちょっとネタバレがありましたがそれについては文句を言えない。ともかくかなりリアリティのある展開ではあり,これが連載形式だった時はそりゃあ読者はハラハラものだったでしょうね。幸福→不幸みたいな流れが複数回あるのも良い感じ。ただ,長編としては読みごたえが無い感じがしますね。まぁそれも魅力の裏返しだと思います。

 さて,これが好きな人は

十五少年漂流記』/ジュール・ヴェルヌ

も好きかもしれません。サバイバル風味がある,という意味合いです。SFサバイバルなんてジャンル,他に全然知らないんですが,そもそもあるんですかね。『インターステラー』はちょっと近いかな?

 

 ここからはちょっと私信。自分は割と本を読んでいる自信がある(なんだかんだ月3~4冊ペースを最近維持できている)ので,読書ソムリエ的な活動とかやってみたい気持ちもあります。興味がある人はおすすめできるかもしれません。また,本格的に1年100冊をやる機運も高まりつつあります。ただ,本棚に残った本の半分以上が学術書なのでハードルがめっちゃ高い。

 さらに追伸。本棚がカビました。少し蔵書にも被害が出て最悪の気持ちになっています。バイトが決まるなどの金策ができたのでスチールラックの本棚を買おうかなぁと思うなど。そしたらカビじゃなくてサビたりして。ガハハ。

読書備忘録14『トランスフォーマー ゴースト・オブ・イエスタデイ』/アラン・ディーン・フォスター 金子司 訳

 読書備忘録を始めてから初めての海外SF(映画派生作品)です。トランスフォーマーシリーズ自体は割と好きで,初めてそれを意識したのは確かマクドナルドのハッピーセットだったはず。確かブラックアウトとバンブルビーのおもちゃで遊んでました。そんなことまで覚えてるんだなぁ,と自分のオタク趣味が怖くなるなど。実家を探したらバンブルビーは残ってそう(小学校高学年くらいまではちょいちょい引っ張り出していた記憶があるので)(今思えば随分と幼いな,お前)。

 この本の内容は,ハリウッド映画の『トランスフォーマー』の前日譚です。アポロ計画の裏で実は...,という陰謀論チックなものから始まるわけなのですが,米国モノのSFってNASAかCIAの陰謀から始まるパターン割とありますよね。さもなければ途中から国を巻き込んだ大事になりがち。まぁハリウッド的であるのでそれはそう。事故にによって太陽系外に飛ばされてしまった宇宙船がどうしてかオートボットディセプティコン(後で映画に触れるのでアメリカ版表記にしておきます)に遭遇し,その争いに巻き込まれて...,という感じです。映像化などはされてないようなのもあってか,オチは全くハリウッド的じゃないです。でもそれがSFファンとしては好ましい。映画のネタバレになっちゃうので詳細は省きますが,『トランスフォーマー世界線ではアポロ計画もゴニョゴニョあるので実際全部このロボ達のせいだったりします(詳しくは映画『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』をご覧下さい)。

 裏設定として,自分はハリウッド系のSF映画が大好きというものがあるのですが,『トランスフォーマー』はその中でも3番目に好き(1番は『パシフィック・リム』,2番は『バトルシップ』)です。前述の通り幼いころにこれに触れたことが遠因だと感じてはいるのですが,デカいロボや怪獣が暴れ回るとそれだけで嬉しくなれるし,宇宙人が絡んでくると最高になります。ゴジラシリーズも大好きですしね。この話の教訓としては,幼い頃の嗜好は成長してもかなり引きずることになるから気をつけろよ!ってこと。

 さて,これが好きな人は

トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』(映画+ノベライズ)

『パシフィック・リム』("アップライジング"なんて無かった,いいね?)

『インターステラ-』

バトルシップ』(好き嫌いは分かれると思います)

あたりがオススメです。ちなみにハリウッド映画は字幕版で観るのをオススメします。なぜなら英語スラングと字幕日本語との対応が面白いからと,吹き替えを担当しがちなタレントは声の演技が下手でつまらんからです。後者は特に致命的。『ミュータント・タートルズ』もそれで日本での評価が低いみたいだし。

 

 それでは。

読書備忘録13『ゼロ年代SF傑作選』/SFマガジン編集部編

 今回も短編集。だけれどもオムニバス形式のものになります。特に興味があったのは冲方丁西島大介でした。これはオタク語りなのですが,自分,冲方丁の作品を(単行本化されたものは)ほぼ全て読み切ってしまったのでもう短編とかでしか楽しめない。

 この本のコンセプトとしては,タイトルの通り,ゼロ年代SFの良いモノを纏めよう,という感じでしょうか。実際のところかなり良い作品ばかりでした。ゼロ年代と言われるとやはり自分はセカイ系なのですが,この作品群もかなり影響を受けているんでしょうかね。評論できるほど知識も素養もないので戯言だと思って欲しいのですが,題材としてはハードSFっぽいものが選び取られてはいても,書きぶりなどにやはり「ラノベ的」を感じてしまうモノがちらほらありました。印象的だったのは「アリスの心臓」/梅猫沢めろん で,この方は美少女ゲーム出身らしく(その辺明らかに「セカイ系」意識がありそう),内容的にも宇野が「ゼロ年代の想像力」で述べていた(はず)『白痴のヒロインによる主人公の全肯定』(少し言葉が良くないのも含めて原文ママのはず,ちょっと手元に本がなく細部は違う可能性アリ)を感じました。なるほどなぁ,と言いながら読み進めていました。

 作品として最も印象に残っているのは,『アンジー・クレーマーにさよならを』/新城カズマ で,端的に言い表すと「百合SF」です。セカイ系の延長として「キミ」と「ワタシ」なんでしょうかね(だから知識も素養もないのでry)。時系列が入れ替わりながら物語が進んでいく感じは『ニルヤの島』/柴田勝家 と似たものを感じる。これは肉体的な行為の代わりに情報的な行為(こんな書きぶりが正しいのかはしらん)が主に書かれていて,肉体的な方が苦手な自分としては「これだよこれ!」なんて気持ちになりました。ゼロ年代とSFの融合感もかなり心地よかった。これ,イチオシ作品です。百合オタクも是非読んで欲しい。

 さて,これが好きな人は

『NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション』/大森望 責任編集

『ハーモニー』/伊藤計劃

スワロウテイル』シリーズ/籘真千歳

あたりがオススメでしょうか。セカイ系のオススメはエヴァけものフレンズ(一期)です。あと宇野の『ゼロ年代の想像力』は必読だと思います。早く『母性のディストピア』も読まないと...。

 

 それでは。

読書備忘録12『こちら郵政省特別配達課』/小川一水

 この人まーた小川一水読んでるよ...。まぁ好きなので許して下さいまし...。現在までで2巻まで読みました(3巻がまだ出ていない?)。

 今作は小川一水の官僚系小説(『復活の地』とか)(そんな雑な定義があって良いかは別にして)です。ひょんなことから(?)地方の郵便配達員だった主人公が郵政省特別配達課という特殊な組織に配属されて...,という感じのある意味ドタバタコメディーなんでしょうかね。面白いのはこの郵政省特別配達課,採算なんか度外視でむちゃくちゃな依頼をこなしていくというぶっ飛び部署なんですね。当然そんなことをするには時としてめちゃくちゃなことをしなきゃいけない(法に抵触してそう)ので畢竟ドタバタになるわけ。ネタとしては郵政民営化の話とかもちりばめられていてクスッとします。某黒猫もいたりなんかして。それでもって最終的にはちょっと恋愛要素を入れてくるのは流石小川一水先生ですよ。こういうのを自分はある種ラノベ的と考えている(貶める意図は全くないです)のですが、やはり小川先生はそれが上手いなぁ,と思います。自分,そういうの好きがちなので。

 さて,この本が好きな人は

『復活の地』/小川一水

も読んでみて欲しい。けっこう長いので時間あるときにでも...。『復活の地』はそんなでも無いですが、ほのかに恋愛要素を混ぜ込んでくる系の作家ってあと誰が居ますかね...。ラノベ的を感じるのは米澤穂信とかでしょうか...。『インシテミル』を読み直すのとかアリですよね(その前に『春季限定いちごタルト事件』とかの積ん読を読め)。

読書備忘録11『博物戦艦アンヴェイル』/小川一水

 11冊目。小川一水しぇんしぇえ...。好きです。

 これはいつものSF風味の作品群とは一線を画す感じの海洋冒険小説です。全体的にファンタジー風味がかなり強いですね。海の苦手な女性騎士が新天地を目指した航海に乗り合わせ,新天地での抗争に大活躍!的な。魔法チックなものも出てきますし,神話と地続きな世界観だったりもしますから,the・ファンタジーという感じの趣があります。海洋冒険小説に当然つきものな船での戦闘もちゃんとあってとてもアツい。もともとは2国間の争いを描くのかなぁ,と思っていたんですが,その予想を裏切ってくるような展開もあって面白かった。個人的にはちょっと露骨なアレ描写があったのがうーん,という感じですが,後書きで先生も「もう書けない」的なことを書いていたので若気の至りみたいなところもあるんですかね。二巻目もあるらしいのでちょっと興味アリです。

 この本が好きな人は,

海底二万里』/ジュール・ヴェルヌ

不思議の海のナディア』/庵野秀明(総監督)

未来少年コナン』/宮崎駿(監督)

十五少年漂流記』/ジュール・ヴェルヌ

あたりでしょうか。冒険小説(アニメ)は小~中学時代に大好きだったので割と読んでたことを思い出しました。『宝島』/スティーブンソン,『巌窟王』/アレクサンドル・デュマ・ペール,なんかも読みあさってたなぁという想い出。

 

 それでは。

読書備忘録10『薫香のカナピウム』/上田早夕里

 もう10冊目ですか???早くないですか??????(積極的に自分を褒めていけ)というわけで記念すべき(?)10冊目です。今回も好きピの上田早夕里です。

 内容としては,未来(かどうかは言及が無いものの技術の描写的におそらく人類の未来)の人類が熱帯の森で暮らしているという設定の下,主人公以下が世界の真実を知っていくというある種の冒険モノです。勘のいい人はこの一文で気付くかも知れませんが,『地球の長い午後』/ブライアン・オールディス です。最初の数ページを読んだだけで「オイ!!」となるくらいにはまんまです。月には行っていませんが流れ的に行く雰囲気がありましたし。内容的に踏み込むので詳細は伏せますが,読み進めていくと徳間の漫画版『風の谷のナウシカ』/宮崎駿 じゃん,となります。上田早夕里自身は退廃的な未来を希望ありげに書くのが上手いと思っているのですが,今回もそれがふんだんに溢れていて,かなり絶望的なエンドを迎えているような雰囲気ですが,「俺たちの冒険はこれからだ!」的な良さもあります。

 さて,この本が好きな人は

『地球の長い午後』/ブライアン・オールディス

風の谷のナウシカ』/宮崎駿(徳間の漫画版)

あたりがオススメでしょうか。この二作はめちゃくちゃ良いのでオススメです。特にナウシカはもう20回以上は読み返してますが何度読んでもめちゃくちゃ面白い。

 

 それでは。

読書備忘録9『ヨーロッパ近代史』/君塚直隆

 今回も学術系。といっても通史をざっとまとめた感じの本なのでそれほどカタくも感じない。これでkindleでのちくま安売りで買ったシリーズおしまいです(もうちょっと買っててもよかった)。

 内容としては,ヨーロッパ近代史(ルネサンス以後)を生没年が繋がる3人(ミケランジェロガリレオニュートン)の生きた時代を中心にして通覧しています。視点としては科学と宗教の相克をテーマにしているようで,紹介する人物が宗教的にどのような考えを抱いていたのかと,科学的発展がそれにどう絡んでいくか,という考え方になっています。特にルネサンスの時代は宗教と技術が複雑な絡みをしている(しばしば宗教から自由になった芸術が言及される時代ですが,芸術家のパトロンは宗教に深く関わっているなどがある)ので,こういう視点も大事な気がします。案外科学の発展に大きく寄与した人も熱心な"カトリック信者"なんですよね。こういったところはすごく面白い。

 ちょっとだけ文句を言うなら,宗教を扱うのに1492年のレコンキスタ完了に触れないのはどうなのよ,という気持ちはあります。もしかしたら最近は重要視されていないのかも知れないけど。ともあれ自分の認識としては,レコンキスタ完了の勢いがそのままスペインの対外拡張の原動力になった,という感じなので違和感があった次第。大学受験以来通史をやっていない(近代建築史,冷戦史しか授業を受けていない)のでもう一回勉強したい気持ちが強くなってきました。でもヨーロッパ近代はあんまり好きじゃ無いんだよなぁ...。

 それでは。