【不定期更新】Synthesizer V パラメータを理解する その1『長さ』

 どうも。Synthesizer V(以下:SynthV)おもろの熱が冷めないうちにちゃんと研究しようということで,成果をゆるゆると公開していこうと思います。更新は不定期の予定。

 

 第1回の今回取り上げるパラメータは,ノートプロパティの『長さ』です(図1)。

図1. 音素の長さ設定画面。音素ごとに設定できる。

 要するに子音や母音の長さを変えるパラメータです。VOCALOIDで言うところの『ベロシティ』[VEL]ですね。[VEL]は「子音が前の発音をどれだけ食うか」のパラメータであることはよく知られたもの(子音の「音量」ではない)ですが,SynthVの『長さ』も基本的にはそういった変化をするパラメータだと理解してもらって構わないと思います。ところで,VOCALOIDを使ったことのある人は分かると思いますが,この[VEL]というパラメータは,パラメータ値と実際の変化値との間に直観的でない関係性があります(図2)。

図2. VOCALOIDの[VEL](ベロシティ)の挙動。下の数字が[t a]のVELの設定値で,上が書き出した波形。

 このように,設定値によって非直線的に変化するので,直観的ではありません。定性的に理解するなら,値が大きければ変化は鈍く,値が小さければ変化が激しい,となります。ちなみに,この波形は初音ミクさんのものですが,他ライブラリでも基本的な挙動は変わらず,無音の時間が変わります。

 前置きが長くなりましたが,それではSynthVではこれがどうなっているかを以下に図を交えながら説明していきます。基本的には図に条件を書き込んでいますが,エディター本体のバージョンを書き忘れていたので補足しておくと,「Synthesizer V Studio Pro 1.8.1 Synthesizer V Engine 2.7.0」です。

図3. [a] [t a]の[t a]ノートにおける[t]の『長さ』を変更して書き出したもの。右の%表記の数字が設定値。

 黒い直線がパラメータの設定最小値と最大値の書き出し結果における[a]の終点を繋いだもの,赤い曲線が各設定値での[a]の終点を何となくの曲線で繋いだものです。これを見れば一目瞭然ですが,VOCALOIDの[VEL]と同様に直線的に終点が短くなっていないですね。つまり,SynthVもVOCALOIDと同じくパラメータ設定値と変化値との間の関係が非直線的です。また,その変化も値が大きければ変化は鈍く,値が小さければ変化が激しい,という[VEL]と同様の挙動です。ところで,値が大きいと前に食い込む長さが長く,小さいと食い込む長さが短い,というのは[VEL]と逆なので注意が必要です。SynthVがVOCALOIDのパラメータによる変化を真似したのか,ソフトウェアでの処理の都合上これが良いのか,そういった部分は寡聞にして知らないので置いておくとして,VOCALOIDを使っていた人間としては変化が同様なのは混乱しなくて良いとは言え,変化が直線的でないというのはやはり直観的でないので難しくもあります。

 それでは,前の発音である[a]の母音の『長さ』はどうでしょうか。

図4. [a] [t a]の[a]ノートにおける[a]の『長さ』を変更して書き出したもの。右の%表記の数字が設定値。

 図3とはパラメータ値の変化が上下逆になっていることに注意してください。黒い線と赤い線は図3の時と同じです。これを見てみると,[t]の長さと同様に非直線的な挙動をしていますが,やはり,値が大きければ変化は鈍く,値が小さければ変化が激しい,という[VEL]と同様の挙動です。一方で,[t]の長さの変化値に比べて変化幅が大きいですから,こちらの方がよりはっきりと違いを理解できると思います。また,値が大きい方が前に食い込む長さが短く,小さいと食い込む長さが長い,というのは[t]の長さとは逆で,[VEL]とは同じ挙動であることにも注意が必要です(考えてみれば当たり前ですが)。

 

 さて,『長さ』の挙動を理解したところで,実用上どうするのが良いか,という話になります。個人的には「大まかに前の母音の『長さ』で調整をする」のが良いように思っています。これは何よりも変化が大きい方が方向性を決めるうえで有効だと思うからですが,当然のことながら微調整のためには細々した変化の方が都合が良いので,そういった意味で「後ろの子音の『長さ』を調整する」ことも必要だと思います(玉虫色の回答)。注意が必要なのは,前者の考え方であれば,この母音の『長さ』パラメータは「後ろの子音がどれだけこちらを食うようになるか」というものだと理解した方が実用上良さそうである,ということでしょうか。

 

 以上,Synthesizer V パラメータを理解する その1『長さ』でした。その2もネタ自体はあるので検証してまとめようと思います。それでは。