読書備忘録2021-29『京大変人講座―――常識を飛び越えると、何かが見えてくる』/酒井敏ほか

 kindleで安売りしてたので。あとお世話になった先生方がいっぱいいたので。

 てなわけで某変人講座の書籍版です。実は自分はこの講座に1度しか行っていないので話としては初耳なものも沢山ありました。書きぶりは「簡単に」を強く意識している感じで,入門書的な色合いもあったように思います。ただ,紹介されている研究内容は教授方の研究対象ど真ん中というわけでもなさそうなので,これで指導教員を考えるなどする人(たぶんいないけど)は要注意でしょうかね。というかかなり主流からずれたことをやってそうな方もいたのでよい子はちゃんと基礎的な部分もやりましょうね,というお気持ち。地質学なんて特にそうです(小木曽先生の話は基礎的な部分でしたけど)。

 全体として面白い読み物として良い感じだと思いますが,知的好奇心を満たすものとしてはイマイチかも知れない。多分そういう方面に意識が向いてないと思うので良いと思いますが。

 本として異色なので今回はオススメは無しで。それでは。

読書備忘録2021-28『Fと成りうる者』/初瀬明生

 いつもとは毛色異なるホラーもの(偶然川柳)。てなわけで今回はちょっと息抜き的に短編です。

 ホラーものを本当に読まない(おそらくまともに読んだのは『Another』/綾辻幸人 くらい)のでとても新鮮。タイトルで森博嗣を連想してしまったんですが,リスペクトとかも感じず,内容は全然関係なさそう。根底に「恐怖は伝染する」的な思想があるはずなのですが,ホラーの主役そのものにもそれを反映させているんだと思います,多分。個人的にはもっとたくさんの人が巻き込まれていっても良かった気がします(ぜったい『Another』の影響)。それはさておき,タイトルのFはいったい誰なんでしょう,ネタバレになるので深くはアレですが,もし自分の予想通りなら少し拍子抜けです。

 さて,お勧めするならやっぱり

『Another』/綾辻幸人

『バイロケーション』/法条遥

あたりをお勧めします。2つ目はあんまりホラーじゃない気がする(法条遥がSF畑の人なので)のですが,角川ホラー文庫から出てるのでそういうことにしておきます。

 それでは。

読書備忘録2021-27『科学哲学への招待』/野家啓一

 また学術書シリーズでございます。科学哲学もやっぱり押さえとくべきだよなー,っていうモチベ。それ以上でもそれ以下でもない。

 モチベ的にそれほど期待していたわけではなかったんですが,ことのほか楽しめ,特にポパーの議論が印象的でした。地球科学なんてやってると「正しい」なんて絶対分からなくて,証拠を一番説明できる説が一般に信じられる訳なんですが,まさにポパーの科学哲学観であるところの反証可能性云々の話だなー,と(細々した用語は覚えきれないです,もうすっかり頭が弱ってるので)。例を挙げるとするなら地向斜プレートテクトニクスとかでしょうか(微妙に違うかも知れない)。最近の肌感覚からすると,ホフマンの『スノーボールアース』もちょっと怪しいんじゃないかという話もあります。ともかく,基本的には『反証がないから暫定的に正しい』という立場になるんですよね。他の分野だと違うこともあるんですかね。もしかするとたまーに科学観で話が合わないことがあるのはそういった部分にあるのかもしれないなどと愚考してみたりしなかったり。

 さて,やっぱ学術書のオススメなんてできないっすわ。科学哲学の良書とか知らないし,他の分野にしろ自分の理解が及ぶ範囲が少なすぎる。もっと勉強しないといけませんね。

 それでは。

読書備忘録2021-27『裏世界ピクニック6 Tは寺生まれのT』/宮澤伊織

 霞ちゃん......。いきなりオタクの呟きが出てしまいましたがぼくは元気です。またまた読んでしまったことになります。これで現段階での既刊はすべて読んだことになるはず。

 今回はかなりこれまでと毛色が違う印象が強いです。今までは『裏世界と関わることによる悪影響』が主軸となって描かれていましたが,今回は『裏世界との関わりが断ち切られることによる悪影響』とも言えるものが描かれています。ずっと言っているように,どんどん裏世界に引き込まれてしまうが故に『其方側』に染まっているという感じなんでしょうか。ともあれここにきててこ入れが入ってきてまたまた面白くなってきました。冒頭の呟きに戻りますが,これから霞ちゃんがどんなふうに物語に絡んでくるのか楽しみですね。ほんとうに。

 ここからは近況報告ですが,勢いでBLEACH全巻買っちゃいました&読んじゃいました。やっぱめちゃくちゃ面白いですね。あと単純に久保先生の絵が上手すぎる。あんなカロリー高そうな絵が週刊で連載されていたというのが本当に信じられない。実はついでにBURN THE WITCHも買っちゃったのでそちらも楽しみにしながら生きています。そうこうしてると今度はHUNTER×HUNTERが読みたくなってきちゃったし,ジョジョとかNARUTOも欲しくなってきちゃう。ほんとうに良くない。

 それでは。

読書備忘録2021-26『クリスタルガード・テンマ 1 小説版: ゼロ分子編 』/峭ノ轟,後藤博之

 kindleストアの無料本で見つけ,「SFっぽい!とりあえず買って読も!」的なノリで買っちゃった一冊。まんまSFで自分の嗅覚をさらに信用するようになりました。軽く情報を調べてみると,どうやら『クリスタルガード』という車用のコーティング剤のおまけとして書かれた本らしい。道理でなんか聞き覚えがあった訳です。

 さて,内容はといえば,コーティング剤にナノマシン的サムシングを配合することによって車をハイテクマシン化させることが可能になった近未来,といった感じでしょうか。割とリアリティがあって面白いです。オープンソースを改変してさも自社開発のように振る舞う会社とか実際にありそうでクスッとしました。全体的な印象としては,けっこうハリウッド的(というかマーベル?)だなぁという感じ。日本だとあんまり変身のこまごました部分は描かない印象。

 ちょっとだけ気になったのは,文章全体を通して英語が多い(くせにちゃんと後ろで和訳しているのダサいような......)こととルビを括弧書きにするのはちょっと違うような......というところ。けっこう好みの問題かもしれない。

 今回もオススメやるやつはなしってことで。なんか最近馬鹿みたいに本を買っているのでバシバシ読んでいきます。では。

読書備忘録2021-25『裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル』/宮澤伊織

 やっと5巻目にたどり着いた。ちょっと百合の過剰摂取で食傷していたので少し離れていました。だんだん百合が分かってきたかも知れない2021です。

 さて,シリーズの5作目。2度目のネタをどう調理するんだろうと思っていたのですが、案外さっぱりしていて少し拍子抜けでした。それはさておき少しいつもと雰囲気の違う短編が挟み込まれていて新鮮な気持ちになりました。今までの百合感から一歩進んで(もしかしたら最初からこうだったのかも知れない)葛藤を描くようになっており,かなり良くなってきました。嬉しい。順調に主人公二人組(特に空魚のほう)がおかしくなってきているようで,やはり今後の展開が気になってきます。普通獅子舞と踊ったりはしないでしょ。

 閑話休題。ここ最近某のストレスもあってやたら本に課金してしまいます。特にジャンプ漫画の熱が再燃してしまい,以前言っていた呪術廻戦に加えてチェンソーマン,そしてBLEACHも全巻揃えてしまいました。さらにそれとはあまり関係なくHELLSINGも揃えてしまったし,買いそびれていたDグレも27巻を買いました。ほんとうにストレスって怖い。

 それでは。

読書備忘録2021-24『スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの』/籘真千歳

 ずっと好きなシリーズ。これは自分あるあるなんですが,既刊情報をほとんど検索しないので(古)本屋で「あ,続きあったんだ。買お」などとなることがしばしば。なので好きなシリーズと言いながら今更最終刊(2013年発売)を読みました。これが馬鹿というやつです。

 めちゃくちゃ久しぶりだったのでちょっとだけ「あれ?こんな話だっけ?」になりました(内緒)。多分A-とかB-とかでストーリー分岐があるんですよね。たまーにそういうスタイルの小説も見かけるので,これもそうだと思います。大ぶろしきを広げた今までのストーリーをグッとコンパクトにまとめようとしたのかなぁ,という印象です。読み直さなければ全く確かなことが言えない程度には記憶の彼方に既刊の情報があるんですが,もう少し長くても良いのですっきりしたかったところはあります。

 インスピレーション元に某有名東方関連楽曲があるとのことで,歌詞の引用などもあり,そういう解釈でそうストーリーに持ち込むのか,というあたりはすごく面白かったです。個人的にはもっとBad Endを押し出してほしいなぁという気持ちも無きにしも非ずですが,それはさておきほどよい絶望感も嫌いじゃないです。

 さて,あんまりおすすめができるほどこれ系統の作品を知らないので,今回は少しパス。とはいえ全く挙げないのはアレなので,設定を共有しているところの

『θ 11番ホームの妖精』/籘真千歳

を挙げておきます。キャラ造形がけっこう似ているところもあり,作者の性癖のようなものを感じます。

 それでは。